詳しくは「シビレシピ」の「麻辣油」レシピを参照していただきたいが、中華食材店に行かずともスーパーで買える食材だけで作れるのでこれはぜひ一度試していただきたい。材料は、八角、花椒*1、唐辛子、にんにく、菜種油。
昨日、これをまた作ってみて、レシピの手順を辿るその一つ一つのプロセスに新鮮な感動を覚えた。「料理」というのは多かれ少なかれそういうことかもしれない。食べるために作るというのは事実だが、自分で作ることはその作る過程自体に感動と喜びがある。殊更、麻辣油はそう難しくもないが、唐辛子と花椒を石臼で磨り潰し*2粉末にするときの香り。八角を油で煮るときの香り。粉末にした唐辛子と花椒に熱い油を注いだ時の泡立ち方とその音。八角、唐辛子、花椒、にんにくが一体となったあまりにも豊かな香り*3。そして出来上がった時の宝石のような美しい透明な赤色。もちろん味も言うまでもなく素晴らしいんだけど、過程のどれもが目に耳に鼻に、五感に対して魅力的で、食べるまでもなく満足してしまった。
和食には、「スパイスの香りを油に移す」という調理法は、あったとしても相当マイナーではないかと思う。私見では、スパイスを活用する文化については和食は完全に大陸と断絶しており、ほぼ日本独自のスパイス/ハーブ(山椒、山葵、和からし、三つ葉や山菜類)で独特な世界を構築している印象だ。インドはカレーの国だから言うまでもないが、中国料理もスパイスの使い方にかけてはヨーロッパに決して引けをとらない。もちろん、山葵や葉山椒、実山椒を効果的に活用してはいるのだが、八角やにんにく、唐辛子を使った料理が発達しなかったのは、往時の日本人の好みがあったのだろうかが、少々残念な気もしている*4。