毎日まめご飯。

素人の料理好きによる料理メモ。免責事項:このレシピを参照することでもたらされるいかなる損害にも筆者は責任を負うことはありません。自己責任でご利用ください。

料理の各手順の意味

先日カレーを作った時に、土井先生の下記レシピを参考にした。

A. 鍋にサラダ油大さじ1/2、バター30gを溶かし、たまねぎ、にんにく、しょうがを強めの中火で炒める。鍋についた焼き色をたまねぎでこそげるようにして、きつね色になるまで8分間ほど炒める。

B. 鍋に小麦粉大さじ4をふり入れ、少し火を弱めて炒める。鍋にできた小麦粉の膜をこそげるようにしてよく火を通す。

C. カレー粉を加えてさらに炒める。

D. フライパンにサラダ油大さじ1/2を熱し、2の牛肉をほぐさないようにして両面に焼き色をつける。

E. (焼き色をつけた牛肉を)鍋に加え、炒めてなじませる。

F. 同じフライパンをきれいにし、サラダ油少々を熱して、じゃがいもとにんじんも焼きつけるようにして炒める。

G. 塩小さじ1/3を加え、時々混ぜながら、にんじんとじゃがいもに火が通り、少しとろみがつくまで25分間ほど煮る。

このA〜Gで、それぞれ「炒め」もしくは「煮」ているのだがそれぞれ調理している素材も違えば、意味も微妙に違っている。Aでは「強めの中火で8分間」、主に玉ねぎの調理で、きつね色になるまでしっかり炒める。Bは小麦粉と素材をなじませ、また小麦粉に熱を加えてアルファー化させる準備になっている。Cはカレー粉を構成するスパイスに油と熱で香りを出すため。焦げてしまうので強火はNG。Dは書かれてあるとおり、焼き色をつけるため。Eは、小麦粉・カレー粉を牛肉にもなじませて味に偏りが出ないようにするため。Fは、じゃがいも・人参にメイラード反応を起こさせ焼き色をつけるため。Gはじゃがいも、人参の芯まで火を通して柔らかくさせるとともに、炒めた小麦粉をアルファー化させてスープにとろみをつけるため。

囲碁の一手一手と同じように、料理の素材や各手順にはしっかりと意味がある。単に加熱するだけでもその意味/目的は無数にあるし、その目的に応じて加熱の仕方も変わってくる。でんぷんをアルファー化させるため?メイラード反応を起こすため?カラメル化?タンパク質を固めるため?殺菌のため?水分を抜くため?脂を溶かすため?細胞壁を壊すため?油と水を交換するため?香りを立たせるため?…,etc.

それを認識して料理をすることと、認識せずに漫然と料理するのでは出来上がりも別物になるだろう。

そういえば、中国には調理に使う漢字/言葉がたくさんあるらしい。例えば

  • 炒:さっと炒める。
  • 爆:高火力で一気に火を通す。
  • 炸:たっぷりの油で揚げる。

など。(参考:「炒」「爆」「炸」…中華料理のメニューで使われる漢字を学ぶ :: デイリーポータルZ)日本語だと文章で説明するところを、中国語だと違う言葉が用意されているということだ*1。調理法の繊細さが端的に表されている例とも言えるのではないか。

いまはそもそも知識がない/理解しきれていないことが多いが、ひとつひとつの手順の意味をしっかり知識として取り入れ、理解して、調理に反映していきたいと思う。

*1:中国語では中華鍋を使った高火力の調理が多いから特に火偏を使った漢字が充実することになる。中国以外の各国料理にもそれぞれのこだわりポイントがあるはずだ