毎日まめご飯。

素人の料理好きによる料理メモ。免責事項:このレシピを参照することでもたらされるいかなる損害にも筆者は責任を負うことはありません。自己責任でご利用ください。

三平汁 または 北海道風塩鮭のスープ

以前、三平汁の存在を知らなかった時に、配偶者の思い出の味として酒粕を使った「三平汁」という汁物があるということで一度作ってみたことがあった。味見は配偶者に任せて適宜調整したらそれなりに思い出の味に近づいたらしかったが、自分としては不味くはないのだがいまいち何がいいのかピンとこないまま過ぎてしまった料理ではあった。

改めて機会があり、調べてみた。するとどうやら、「三平汁すなわち酒粕を使う汁物」というわけではなかったようだ。

「三平汁」は、塩漬けにして保存された生魚を魚を野菜とともに煮こみ、その魚の塩分だけで味を付ける。同じサケを食材とする「石狩鍋」と一緒にされることがあるが、味噌仕立てで生サケを使う「石狩鍋」とは異なり、「三平汁」は主に塩漬けされたサケを使うことが特徴。

ポイントは、生魚ではなく塩漬けの魚(のアラ)を使い、その塩味を活かしたスープだということらしい。生の鮭を使うと、石狩鍋になってしまうし、生だからスープにはそのままでは塩味が足りないので、味噌仕立てということになる。三平汁は酒粕を使ってもいいし、味噌や醤油を使ってもいいらしいが、石狩鍋との違いがそこにあるのだとすれば、やはりそのアイデンティティは大切にして、味噌や醤油を強調するのは避けて、メインの味付けは塩ベースのスープにしたいと思った。

普通のアラ汁は生姜、長ネギ、アラで煮てから酒を加えて味噌で味付けるという形で、がっつり魚の生臭さ対策をしている。一方で三平汁のレシピには、なぜかニオイ消しを意識した食材はあまり使われていない。前述の理由で味噌は強調したくない、となると、酒粕に行き着くのは自然な流れにも思える。上記レシピには酒粕は使われておらず参考にできないので、みりんを加えるタイミングで、味を見つつ適宜加えていくことにした。前回は最初は酒粕の味が強すぎて「これは違う」と後から薄めるはめになっていたので、注意深く、スープが全体的に白く濁りはじめてきた程度、酒粕の匂いが鼻につく前に止めておいた。チューブで10〜15cm程度だっただろうか。

味を決めるのは、やはり、ここでは塩味が最重要。旨味を塩で引き出す必要があるし、塩ベースなので塩はしっかり(小さじ1/2程度)加える。和風スープを作る際にはほんだしやいりこだしを使うことが多いが、今回はあくまで昆布だしにこだわりたい。しかし、相当しっかり昆布だしを取らないとやはりコクが足りない。昆布20cm程を浸しておいた水800mlに、更に顆粒の昆布だしを1/2本程度入れたが、出汁を取る時間が十分でなかったようで水っぽい。

このままではヤバい、というわけで、先日せんべい汁を作った際にその効果に驚かされた隠し味としての白味噌を少し加え、さらに醤油も小さじ1程度加えてみた。そのくらいいろいろ加えたら、ようやく味が整ってきた。

結局、試行錯誤中という印象は否めないながら、それなりに美味しいスープはできた。味噌、醤油は隠し味として機能しているし、酒粕の匂いも強すぎず塩味のバランスも悪くない。様々な野菜の旨味がスープに溶け込んでいるし、鮭のアラ(今回はカマを使った。5、600gくらいはあっただろうか。かなりの量。)からもいい出汁が出ている。酒粕が奏功したのか、生臭みはほぼない。酒粕を使ったスープは味噌ベースのスープと違って塩辛さも尖らず、上品で深みのある飽きのこない印象となった。一晩置いて改めて翌日食べてみたら、さらに旨味が強まりより美味しくなっていた。

三平汁というといかにもプリミティブな日本の田舎料理、という響きもあるが、その実態は塩ベースで旨味を引き出した上品なスープだったというわけだ。フランス料理に近いものがあるのではないか。三平汁の別名は、スープ・ド・サーモンサレ・ア・ラ・ジャポネーズということにしよう。