毎日まめご飯。

素人の料理好きによる料理メモ。免責事項:このレシピを参照することでもたらされるいかなる損害にも筆者は責任を負うことはありません。自己責任でご利用ください。

土井善晴先生はすごい/素材のレシピを学ぶことの重要性

以前このブログでも紹介したかもしれないけど、土井善晴先生の『素材のレシピ』というレシピ本が素晴らしい。一見、「さりげない基本料理」のレシピ集だが、レシピそれぞれに土井先生カラーがかなり濃厚に反映されている。また、素材ごとに見開き2ページが割かれ、1素材について4種類のレシピが紹介されているという構成だが、構成が大きな意味を持つというのはレシピ本としてはこの本で初めて実感させられたかもしれない。

というのは、やはり素材から逆引きできることの重要性。そして、単に逆引きできるだけでなく、例えば春菊なら春菊のページを開けば、見開きで4種類の春菊レシピを簡単に見比べることができるということ。

「1ページに2種類のレシピ」というのも重要だ。そもそも、1/2ページで紹介しなければならず、複雑なもの、材料が多いものは掲載できない。結果的にシンプルで、素材の良さが否応なしに強調されるレシピが増える。もちろん、その副作用として、派手さがなく、「さりげない基本料理」という印象になりがちという側面はあるだろう。しかし、実際に作ってみると、この短く材料の数も少ないシンプルなレシピが確かな、間違いのない美味しさを約束してくれることに驚かされるのだ。

アスパラご飯、油揚げのハムチーズ焼き、アボカドのわさび醤油、焼きえのき、かぶと厚揚げの煮物、かぼちゃの桜えび衣、小松菜と豚バラの煮物、じゃがいものパンケーキ、春菊の混ぜご飯、菜の花の炒り卵、豚肉のネギ巻、もやしの焼き飯などなど、印象に残っているレシピは数多い。

また、素材ごとにシンプルなレシピを学ぶことで、素材単品が余った時にそれを作ることで一品増やす、という技が身につくというのもある。これは土井先生のレシピに限った話でもないが、そういったレシピを学ぶことを通じて、例えば白菜があれば浅漬け、キャベツがあればクミンキャベツ、あるいはお好み焼き、なすがあればトルコ風なすのペースト、ひよこ豆があればフムス、アスパラがあればアスパラご飯、菜の花があれば菜の花の炒り卵、といった具合に、上手な消費の仕方が身についていくということだ。これはとても重要なスキルだと思う。

閑話休題

筆者の経験上、レシピにおける品質と、ネット上でのバズりの相関は非常に弱い。ネットで目立つ「料理研究家」は少なからずいるが、料理は見た目が美味しそうであっても実際に美味しいかどうかはネットだけ見ても絶対にわからない。イラスト、映像、音楽、あるいは短歌や俳句、また試合の結果等であれば、これは実力をウェブ上である程度確認できるというのはある。しかし料理の場合、見た目が一見美味しそうに見えて、動画で食べてる人が絶賛していれば簡単に「騙せて」しまう*1。実際にレシピにしたがって作って確認しても、それでは検証しにくいというのも厄介なところだ。仮にレシピに忠実にしたがって作ったものが不味かったとしても「作り方が問題だったんだろう、ちゃんとした調理スキルを持った人が作れば美味しいはずだ」ということになるからだ。もちろん、料理がある程度できて、舌がしっかり鍛えられている人であればその辺の真贋は結構あっさり判定できるだろうけど。

*1:もちろん、食べてる人は心底美味しいと思っているかもしれない