牛肉のチリーインオイル炒め というレシピがある。このブログを始めるかなり前に一度このレシピを参照して作ったことがあった。タイ料理屋で食べたことがあったソフトシェルクラブのプーパッポンカリーに似ていてとっても美味しかったと記憶している。チリインオイルが再び入手できたので、また作ってみることにした。
ちなみに、チリインオイルというのはタイの合わせ調味料(タイ語では น้ำพริกเผา ナムプリックパオ)で、中華料理における麻辣醤みたいなもの*1。タイ料理のレシピに「チリペースト」とあれば多分ナムプリックパオのこと。日本のタイ食材店でも安価で入手できる。ココナッツミルクとチリインオイルを使った「チリインオイル鍋」などもとても美味しいのでぜひお試しあれ。
レシピ

このレシピ、作り方自体にも少々分かりづらいところがある。「1. Aの材料をすべて混ぜておく。」とあるが、いや…どこまでがA?右列は3行目まで(カレー粉、針生姜、にんにく)がインデントされてるからこの3種類がAと捉えるのが一番普通だと思うが、それだとシーズニングソース、片栗粉、牛乳または水、卵、シーズニングオイルの各材料がレシピに登場しないことになってしまう。アオリの「ふわっとした卵」という文言や、手順3の「一気にAを入れて優しく大きくかき回し」というあたりから、Aが卵液であることが伺えるので、右列全体がAであると理解するのが妥当らしい。
また、肝心のチリインオイルがレシピに登場しない。どこで使うの?よくわからないので、卵液に一緒に入れてしまった。基本的には炒めた牛肉・玉ねぎ・赤ピーマンの上に卵液を注いでふわっと仕上げるという意外とシンプルな料理なのだと思われる。肉と野菜の火の入れ方さえ注意すれば、あとは混ぜるだけ、という感じなので失敗することも少なそうだが、いろいろ謎が多いのでもう少し調べてみる。
レシピ名の謎
また、今ひとつ腑に落ちないのがこの料理に対する「チリインオイル炒め」というレシピ名だ。チリインオイルが誤植なのか何なのかレシピに登場しないので判断しようがないが、量的にも小さじ1/2と僅かな量で、レシピ名にその名を冠するほどの存在感ではないような気がする。レシピに誤りがあるのか、それともレシピ名に誤りがあるのか。
そこで、プーパッポンカリーのレシピを参照してみた。ちなみに「プーパッポンカリー」は、プー(ปู; 蟹)+パッ(ผัด; 炒め)+ポンカリー(ผงกะหรี่; カレー粉)=「蟹のカレー粉炒め」という意味らしい。(cf.
タイ料理名(メニュー)のタイ語(文字)表記:タイ語解析 วิเคราะห์ภาษาไทย )
具材を炒めてからココナッツミルクと調味料で煮て、最後に溶き卵を回しかけて仕上げる。溶き卵であって調味料を混ぜた卵液ではない点が異なるが、ほぼほぼ上記レシピと同様だ。さらにタイ語で検索してみた(เนื้อผัดผงกะหรี่ (ヌア+パッポンカリー))ところ、タイのクックパッドのレシピが出てきた(สูตร เนื้อผัดผงกะหรี่ โดย สุประวีณ์ รัตนะ - Cookpad )これは卵もチリインオイルも使っており、レシピも非常によく似ている。
ヌアパッナムプリックパオ(เนื้อผัดน้ำพริกเผา)で検索してみた(ヌアパッポンカリーのポンカリーをナムプリックパオ(チリインオイル)で置き換えただけ)が、やはり卵を使わずにチリインオイルを使った炒め料理ばかりが出てくる。
どうやら上記の「牛肉のチリインオイル炒め」は、「牛肉を使ったパッポンカリー」であると考える方が理解しやすそうだ。
ただ、調味した卵液で仕上げるというアイデンティティについては「牛肉のカレー粉炒め」というレシピ名には反映されていないし、チリインオイルがカレー粉に置き換えられただけなのであれば、レシピ名についての違和感的にはどちらであっても変わらず、どっちでもいいんじゃないかという気もしてくる。
もう一点。「シーズニングオイル」というのは何なのか。「タイ料理 シーズニングオイル」で検索すると、鮮やかな唐辛子の赤に染まった澄んだオイルの画像と、「タイ料理におけるラー油」のような説明が出てくる。とすると、唐辛子・にんにく・香辛料などの色・香り・味を油に抽出したものなのだろうと思われる。だとするともしかして、その際にできるペーストがチリペーストで、油部分がシーズニングオイルなのではないか。つまりチリインオイルのオイルはシーズニングオイルであると。
とすると、レシピには「シーズニングオイルで牛肉を炒める」とあるが、もしかするとこの際にチリインオイルのペースト部分も一緒に炒めるのではないか。それなら、シーズニングオイル+チリペーストで牛肉を炒めるわけだから、まさに「牛肉のチリインオイル炒め」という名称がぴったりハマる。
改めて、アライドコーポレーションのレシピを見返すと、タイ語の名称が載っている。ヌア・パット・ナムマン・ナムプリックパオとある。この「ナムマン」は「油」つまりシーズニングオイルを意味する。
レシピ改
上記考察(?)を元に上記レシピの不足を自分なりに補ってみる。
- 牛肉は一口大に切り、塩、胡椒、片栗粉で下味をつけておく。
- 卵2個、牛乳100ml、シーズニングソース大さじ1、シーズニングオイル大さじ2、片栗粉小さじ1を合わせて泡だて器でよく混ぜておく。
- フライパンにシーズニングオイル大さじ2とチリペースト小さじ1/2を入れて中火で熱し、針生姜大さじ1/2、にんにくのみじん切り大さじ1/2、カレー粉小さじ1/4を入れ、香りが立つまで炒める。
- 牛肉200gを加えて炒め、8割方火が通ったら野菜(くし形切りの玉ねぎ1/4個、赤ピーマン1/2個)を加え、強火で炒める。
- 1を一気に入れて優しく大きくかき回し、火を止める。仕上げに万能ねぎを加えて出来上がり。
この作り方だと卵液が濁らず、メリハリのついた見かけになる。塩味はシーズニングソースでつけることになるので、シーズニングソースは重要。牛肉の下味も忘れずに。プーパッポンカリーとは違って煮込むプロセスがないので、カレー粉をいついれるかは悩ましいところ?一緒に焦がさないように炒める方が香りが立っていいかな、と思います。
プーパッポンカリー=親子丼?
それにしても卵液で仕上げる料理は珍しいと思ったが、改めて考えると、日本の親子丼もそうだった。例えば「お好み焼き」は台湾料理のオアジェンやベトナムのバインセオなど各国に似た料理が存在しており、ルーツを共有している可能性もある。同様に、親子丼とプーパッポンカリーもその可能性があるかもしれない。タイ料理はアジアの中でもかなり独特な文化(漢字文化圏でもないし、スパイスやハーブもかなり独自のものを使っているし…)を持っているので、あまり共通点はないと思っていたが、意外な共通点を見出した気分だ。別に客観的な裏付けがあるわけではないのだが
タイ料理にももっと詳しくなればいろいろな発見がありそうだ。
*1:といっていいんじゃないかと思う